「異星人の郷 」読了。
ペストの影におびえる14世紀のドイツの小さな村が舞台。
ある夏の夜、炎とともにその村に異形の者たちがやって来る。
悪魔にも似たバッタのような姿をしたその者たちは、どこかから、「船」に乗って旅に出て、その途中村の森の中で難破したらしい。
彼らと接触した神父のディートリヒは、形も心もかけ離れた彼らの中に何を見いだしたのか?
中世のヨーロッパを舞台にした、ファーストコンタクトの物語である。
そこに、現代の宇宙物理学者と統計歴史学者がからんでくる。
からんでくるといっても、タイムトラベルものではないので、直接両者に接触があるわけではない。
歴史の溝の縁から、現代人が中世に起こった物語を掘り起こして行く、といった形だ。
だが、現代人は、ごく限られた資料から「何か」を推理して行くだけので、主な舞台は、ほぼ14世紀のドイツということになる。
ある意味もどかしさもあって、現代編はいらないのではないか?とも思える構成ではあるが、最後には、それが感動を呼ぶ場面にもつながっている。
異星人と人間の心の隔たりが、案外簡単に(少なくとも表面上は)なくなって行く気がするのは物足りないが、なかなかに読みごたえのある一冊。
中世のペストとSFというと、やはりコニー・ウィリスの「ドゥームズデイ・ブック」が思い浮かぶ。
こちらは、タイムトラベルのからんだ物語だが、主人公が中世に行って与えられた試練と、この作品で、異星人と人間たちに与えられた試練を比べながら読むのも一興かも知れない。
「異星人の郷 」(上下巻)
マイクル・フリン 嶋田洋一訳 上 349P・下 351P 創元SF文庫・上下各 987円