「いえっくしょい〜!
ちくしょうめ。風邪を引いちまったぞ。
うー、さぶっ。
空飛んでる最中にいきなり吹雪だもんなあ。
お、あそこに小屋がある。
あそこでひと休みするか。
ひえっくしょい!」
「おや、扉が開いたな。
誰だろう、こんな吹雪の真っ暗やみの夜に、外を歩いてるひとなんて」
「へっくしょ〜!
あ〜、さぶっ。
鼻水が…」
ズルズル
「やだねえ、かぜっぴきかい。
それにしても、ずいぶんと品のないくしゃみだねえ」
「あん?
どなたか、先客がおいでかな?」
「あ、はいはい」
「それは失礼。
吹雪がやむまで、少しおじゃまさせていただきますよ」
「どうぞどうぞ。
こんな吹雪です。
火もない小屋ですが、ごゆっくりと。
(ひとの前では、ずいぶんと礼儀正しいひとのようだ)」
「(それにしても、こんな小屋に住んでるのは何ものだい?
どうも、農家か何かの小屋のようだが、鼻が利かないんで、ちっとも分かりゃしないぜ)」
「どうも、この吹雪は、朝までやみそうもありませんねえ。
ごゆっくりおやすみなさい」
「あ、それはご親切に。
(冗談じゃないぜ、こちとら、夜しか出歩けねえんだから、明日の夜までここにくぎ付けかい?)」
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カラス、かあと鳴いて、朝がやって参りました。
板のすき間から漏れる朝日が、辺りをぼんやり照らしますってえと…、