面白かったのだけれど、大きな疑問符が残る映画。
小料理屋を営んでいた貫也(阿部サダヲ)と里子(松たか子)夫婦は、ある日、一寸した油断から繁盛していた店を火事で失ってしまう。
落ち込んで、新しい職場もけんかで辞めてしまったりしている貫也を支えていた里子だったが、貫也が客の女と一夜をともにして手に入れた金を見て一度は逆上する。
だが、やがてふたりは、里子の主導で結婚詐欺を企てて新しい店の資金稼ぎをはじめるのだった。
西川美和監督の脚本や演出は相変わらず上手いし面白い。
後半の、夫婦の心の亀裂に至るまでテンポよくリズムを崩さずに見せてくれる。
まあ、そんなのありか?という部分も、大人のピカレスクファンタジーだから、と笑わせてしまう。
が、ラストのラストになって、疑問符が幾つも飛び交うことになってしまった。
最後に、里子が登場するのだが、その姿を見ていて、あれだけ途中に盛り込んでいた彼女自身についての伏線はどこに行っちゃったの?というところだ。
いや、それだったら、むしろ里子は最後に登場しない方がよほどすっきりするぞ、という思いにさせられてしまったのだ(まあ、見る人によって解釈も違うだろうから、見てそれぞれお考えください、というところなのだが)
西川監督の作品は、楽しいにしろ辛いにしろ、最後はすとんと腑に落ちるところが良かったのだが、その意味では、かなり「?」の残るラストではあった。
(
糸井重里氏と監督のインタビューを読むと、最初は別のラストを考えていたようだが、むしろそちらの方が良かったのでは?という気もする)