例の、草彅君がうろついてるだけの「日本沈没」を作った樋口監督だから、実は全く期待せずに見に行った。
冒頭の、隠し砦や滝のシーンが上田ロケだからなあ、という極消極的な動機で…。
そのせいか、けっこう面白く見てしまった。
おそらく、原作の黒澤明版が存在しなければ(あるいは、全く見たことがなければ)、これはこれで、まあまあ今どきのエンターテインメント作品として、そこそこの点数は付けられる出来にはなっている。
阿部寛も、三船に比べていささか線は細いものの、アクションなどかなりがんばっていい芝居を見せてくれている。
若手も、まずまずそれなりにがんばっているし。
ただ、オリジナルに割と忠実な前半に比べ、大幅に変更された後半になると、かなり湿っぽい情緒感たっぷりで、黒澤版のからっとした豪快さを知っている人間から見ると、いかにも物語としてはスケールダウンしたなあという感じがしてしまうのはどうしようもない。
ということは、樋口監督にもかかわらずここまで面白くなったのは、元の脚本の出来の良さがだいぶ底上げしているからだということにもなってしまうのだが(変更された部分には、架空の国とはいえ、戦国時代としてどうなのだ?と首をひねる部分が多々ある)。
映像的には、CGも適材適所という感じで、なかなか良かったのだが…。
一番の謎は、とある人物が、とあるところから逃げ出してくるシーン(未見の方のために、伏せておくけど)。
どう考えても、あのタイミングでは、あの人は死んでますな。
黒澤明だったら、脚本段階で却下してたろうに…。
まあ、全くの別物として見る分には楽しめます。
これがきっかけで、樋口監督がCGだけやってろ!などと言われないですむ力量を培ってくれるといいのだが…。