細田守監督のサイン入りのポスターが飾ってある上田の映画館。
というわけで、監督の新作「おおかみこどもの雨と雪」を見てきた。
おおかみ男に出会って恋をして、彼の子どもを産んだ花と、彼女の子どもたち、おおかみこどもの雪と雨の成長の物語。
おおかみ男といっても、「怪物くん」などでドラキュラやフランケンと一緒に登場するようなヨーロッパ型の狼男とはかなり違う存在。
明治期に絶滅した(とみられる)日本本来の狼と人間が結ばれた末に生まれた最後の狼人間ということだから、ヨーロッパの一種の怪物・精霊的な存在というよりは、日本に古くからある「異類婚」によってこの世に生まれた存在、と見た方がすんなり受け入れられるだろう。
ま、もちろんそれらはすべて「お話」の上でのお約束としての存在、ではあるけれど。
花と子どもたちは、やがて3人で山奥の田舎暮らしをはじめることになる。
人とあまり関わらずに子どもたちを育てたい、という母心からなのだが、どっこい田舎暮らしというのは、人との関わり抜きには成り立たないものなのである。
その生活の中で、姉の雪と弟の雨は、この世界でどう生きていくのかの選択を迫られていくことになる。
物語の形はファンタジーであるけれど、これは、狼人間であるなしに関わらず、誰もがいつかは通らねばならない人間としての成長、そして子離れ親離れの物語なのだ。
「ファンタジーだから」ということで納得しないとちょっと無理な展開も散見できるけれど、なかなか清々しい感動の残る作品だった。
特に病気でもないのに、親の臑をかじり続けてのんべんだらりとパソコンの前に座っているだけのいい年をした若い衆に、ぜひ見ていただきたい1本。
※異類婚=人間と人間の姿を借りた他の生物との結婚。
「夕鶴」の鶴女房や、安倍晴明の母親の信太狐など、実在の生物や、龍や雪女など架空の存在もある。
昔の日本人は、その辺は結構おおらかに考えていたようだ。