「恍惚(あるいは自惚)」と題された とある布教者の肖像
鑑賞の手引き
安土桃山時代頃、日本にやって来た宗教者の肖像と伝えられる。
描かれている人物は、自分の言葉に酔いやすいひとだったと言われている。
説法のとき、あまり根拠もなさそうなのだが、
「ぜひ、うちゅくるしい(美しい)国を取り戻したい!」
と、一見元気そうに舌足らずな口調で話すのが口癖だったそうだ。
美しい国、というのはもちろん神の国という意味である。
(取り戻すのが、「誰から」なのかは、文献もなく曖昧なまま)
十字架は持っているが、彼の信仰していたのが本筋のキリスト教であったかどうかは定かではない。
彼のいう「国」の理念というのが、かなり古くさく耽美的なものだったので、あまり信者は増えなかったようだ。
胃弱で、ストレスに弱い人物だったとも伝えられる。
ひと言コメント
「溶けゆく巨神兵が声を振り絞って吠えているという印象の人物画」