「陛下をお救いなさいまし 河井道とボナー・フェラーズ」岡本嗣郎・ホーム社・1,785円
(この単行本の方は、絶版になっているようだ。購入するなら、文庫本で。わたしは、図書館で借りて読みました)
映画「終戦のエンペラー」の原作に当たるノンフィクション(まあ、資料のない部分は、作者の想像で補われたりはしているが)。
映画の原作とはいうものの、ボナー・フェラーズに関しては主人公として登場するけれど、河井道に付いては、映画には全く登場してこない(片鱗はフェラーズの日本人の恋人のなかに反映されてはいるものの)。
フェラーズは、マッカーサー元帥の片腕(軍事秘書)として、天皇を戦犯としないために尽力した人物。
本の中では、彼と、河井道の人生が絡み合わされて綴られている。
河井道は、1877年生まれ。新渡戸稲造に学び、戦前アメリカの大学に通い恵泉女学園(現在の恵泉女学園大学)を創設した人物。
終戦後、フェラーズが、天皇に関する覚え書きを作成するのに協力した。
映画と違って、フェラーズには妻子がいたし(終戦当時すでに49歳)、道は70歳を越えていたから色恋の関係は全くなし。
映画に架空の恋人を登場させたのは、おじさんとばあさんのふたりじゃ金にならないだろうと踏んだものと思われる(まあ、いかにもハリウッド)。
河井道の生涯をきちんと描けば、「終戦のエンペラー」はもっと深みのある話になったろうが、そうすると多分3部作くらいにしないと尺が足りないだろうな。
映画が物足りなかった方には、一読をお勧めする。