9)イブの夜に(3)
その女のひとは、きらによく似ていたけれど、もっと大人の美しさがからだのなかからあふれているような感じだった。
「母よ。
俊君に、友多くんと友多君のおばあちゃん」
きらが、その女のひとにぼくたちを紹介した。
「こんばんは、みなさん。
いつもきらがお世話になってます」
きらのお母さんは、そういってほほ笑んだ。
きらとふたりで並んでいると、親子というよりは姉妹といった方がよかった。
「うわあ、きれいなお母さんだなあ」
例によって、トモタが遠慮のない感想を口にした。
「ありがとう」
お母さんは、うれしそうにまた笑った。
その時、ぼくは思いだしていた。
以前、父さんの葬式の日、隆志おじさんが見たといった、父さんそっくりな男のひとと女のひとの写真のことだ。
「えらくきれいな女でさあ」
確か、おじさんはそう言っていたはずだ。
そうか、そのふたりというのは、きらのお父さんとお母さんのことなのかもしれない。
きらのお父さんに何か手荷物を渡しているお母さんの横顔を見ながら、ぼくはそんなことを考えていた。
きらのお母さんは、見ためどおりのやさしいひとで、みんなに気をつかってパーティーを盛り上げてくれた。
きらとお父さんもお母さんもくったくなく話していて、その3人を見ていると、なぜ両親が離婚したのかよくわからなかった。
きっと、ぼくなんかには想像のつかない理由があるのだろうなあ、と思うしかなかった。
そんな風に、そのクリスマスイブの夜は楽しい雰囲気のうちにふけていったのだった。
(続く)