久しぶりに本のご紹介。
「ハローサマー、グッドバイ」マイクル・コーニイ著・山岸真訳・河出文庫・369頁 850円(税別)
SF仲間のS氏の薦めで読んだのだが、久々に、心に響く物語に出会った。
作品が書かれたのは、1975年だが、時代の流れに色あせることのない青春恋愛小説の佳作であり、また良質のSFでもある。
舞台は、地球ではないどこかの惑星、登場人物も地球人とさほど変わらないものの異星人である。
「その惑星で二つの国が戦争をはじめていて、主人公のドローブという少年の住む都会にも、何となく不穏な空気が伝わりはじめている。
そんなある日、彼の一家は、港町のパラークシへと夏休暇を過ごすために出かけることになる。
ドローブは、去年もその町に行っており、そこで出会ったブラウンアイズという少女が忘れられずにいた。
再会を果たしたふたりだったが、戦争の影は、二人の思いをも巻きこんでゆくことになる。
そして…」
SFは苦手というそこのあなた、ご安心あれ。読みはじめればすぐに、そんなことはまったく気にならない青春小説だということが分かるだろう。
じゃあ、何も異星や異星人を持ち出さなくても、地球の話にすればいいじゃないの、とおっしゃるかも知れないが、それがこの話があくまでSFであるゆえんなのである。
登場人物が何故地球人ではないのか?その必然性は、最後までお読みになればご納得いただけることと思う。
ロバート・A・ハインラインの傑作に「夏への扉」というSF青春小説がある(山下達郎が歌っている「夏への扉」のモデル。松田聖子の「夏の扉」はタイトルだけイタダキ)。
ふだんSFは読まないが、これだけは読んで感動したというひとも多いらしい。
そんな読者だったら、「ハローサマー、グッドバイ」も、きっと気に入っていただけることと思う。
※傑作と言われながら、なかなか読む機会がなかったのは、80年にサンリオ文庫から出されたものの、その後サンリオ文庫が廃刊になってしまい、絶版になっていたためでもある。今年の7月に新訳で再刊されている。